演出のひみつ

作品について

会衆が問いかける即興劇ー私たちも会衆の一人

ミュージカル「ノートルダムの鐘」は、会衆が演じる即興劇、という形を取っています。会衆とは、集まり(キリスト教では教会)に来た人たちのこと。始めは全員が同じローブを着て、会衆として登場します。彼らはカジモドやエスメラルダの物語を語りに集まります。始めは誰がどの役をやるか決まっていません。この場でこの人物を語りたい!というエネルギーを持った人が、その役になっていき、その場にある物を使って演じる、という即興劇の形を取っているのです。


劇を上演するという設定なので、観ている私たちが常に意識されます。例えば、冒頭での「1月6日の朝1482年」や、道化の祭りでの「横柄な態度の男に近づいて言った」などの観客への説明は、会衆としての台詞です。

観客はカジモドたちの物語を通して、


「人間と怪物どこに違いがあるのだろう?」


と問われます。そして最後、役から再び会衆となった彼らに、はっきりと問いを突きつけられます。舞台中に、その答えは語られません。

 

人間と怪物どこに違いがあるのだろう?
何が良くて何が悪いのか?
光とは、闇とは何か?

 

観客も俳優も、その場にいる全員が考え続ける。そうして少しずつ世の中があたたかくなっていけば…そんな、未来への祈りが込められています。

考え続ける私たちも会衆の一人、作品の一部なのです。

アンサンブル

プリンシパル5人(カジモド、フロロー、エスメラルダ、フィーバス、クロパン役)以外に、男性8人、女性4人のアンサンブルがいます。彼らは会衆や石像、民衆など、様々な役になります。

クワイヤ

薔薇窓の左右には、男女合わせて16人のクワイヤ(聖歌隊)がいます。彼らは主に、グレゴリオ聖歌から引用したラテン語の歌詞を歌います。

舞台のひみつをもう少し

*祈りで始まる舞台*
冒頭シーンで会衆が舞台に登場しながら歌っているのは、第二幕第四場で歌われる「いつか」をラテン語訳したもの。
*最後にも祈りが…*
フィナーレでフロリカが歌うのは、冒頭のオーリム(いつか)。
*床に刻まれたユゴーの思い*
舞台中央の床には、ユゴーが原作を書くきっかけとなったANAΓΚH(アナンケー)の文字が。開演前後や幕間に客席から観ることができます。(触れることはできません)

関連項目

 

(最終更新日:2019年4月16日)